THREE+

三十歳から始まった、育児・夢・仕事・現実に、感謝と喜びの感情が複雑にからむブログ。

ユースケースを考える:キラーアプリケーションという幻想


「新規事業探索やってるんですよね?話を聞かせて下さい」
「こういう新規事業ネタがあるんですけど、どう思いますか?アメリカではどうでしょう?」

これ、良く聞かれます。

サラリーマンなのでストレートに言えないですが正直な答えは、
「それアメリカに持ってきても流行らないと思うよ」ということが多々あります。
なぜ?って環境があまりにも違うからです。

6年アメリカに住んで、だいたい日本側が陥るポイントがわかってきました
それって環境の違いなんですよね。ということで「日本からアメリカに来ましたあるある」をまとめてみた。


コンビニがない。

一時帰国すると、必ずコンビニに行って籠いっぱい買っちゃいます。一人五千円ぐらい。恥ずかしいから妻と二人で行きます。そうすると籠二つで1万円・・・。

セブンイレブンやガソリンスタンドに備え付けのっぽいところや、マンハッタンや大都市にはDuane ReadeやWalgreensといった薬局が進化したコンビニっぽいところはあります。でも日本のようなところは一切ありません。

24時間営業なのは極僅か。っていうか24時間営業だとしても、夜は怖いから行かないし。
あんなに手の込んだ美味しそう(実際美味しい)お弁当やおにぎりも買えません。そもそも夏はアイス、冬はおでんじゃなくて、季節問わずポテチだし。

そういう意味では、アメリカで様々なオンデマンドサービスが流行っているのは、そういった便利で何でも揃う24時間営業のお店が、何時でも歩いていける圏内にないからですかね?


荷物は追跡する。なくなる。届かない。

ネットで買い物することが当たり前になってから久しいですが、それでも買い物をすると最低2日、無料配送を選ぶと実働3~7日ぐらいかかります。要は2週間はかかるんです。それを早くしようとお急ぎ便みたいなのを選んで翌日配送なんてした日には、物とサイトによっては配送料だけで$80ぐらい取られます!

東京だと、アマゾンなら早ければ即日配送らしいですね。国土が広いので輸送に時間がかかるのでしょうか。マンハッタンから車で1時間のところに住んでいますが、Amazon PRIMEでもTwo Day Shipping。翌日配送が最短で、追加料金取られます。また、選べないことが多々あります。

それと、これが許せないのが、荷物はしょっちゅうなくなります。
追跡番号でこまめに見ていても、ずっと動かずにいます。サイトに連絡しても、それは配送業者。配送業者に連絡しても追跡しろ。らちがあかないから返金しろとサイトに迫ると、ようやく直ぐに通常配送で代わりの物を送ると。結果、どっちも届いてオイシイ思いをする、なんて絶対にないです。

あれって、どこに行ったんだろう。日本だと追跡することなんて全くなかったし。追跡しようものなら、地方都市に住んでいた時でさえも、ほぼ家の前にトラックが既に来ていたりもします。


医療費が高い!お金がないから医者に行かない。

医療費、以上に高いです。あり得ません。サラリーマンの3割負担なんてよゆーです。
年初にちょっと精密検査をしなくてはいけないことがあったのですが、血液検査して、超音波で見て、針を刺して検体を抽出して、2つの検査をするだけで2万5千ドル。幸いなことに医療保険が全てカバーしてくれましたが、精密検査にこれだったら、何かあった時の手術なんて無理です。死んじゃいます、っていろんな意味でこんな請求来たら死んじゃいます。

オバマケアとか色々言われており、患者のQOL(Quality of Life)やQOC(Quality of Care)を優先し医療従事者間でのたらい回しによる無駄な歳出を減らし、さらには病気にならないようPreventitive Care(予防)促進による医療の削減が謳われています。でも一般人の行動変化につながるほど、この流れが見える形になっていないのが現状に感じます。

一方で、健康を維持しようとする意識は昔から高く、150キロぐらいの巨漢の人がダイエットといいながら大盛りサラダとXLサイズのダイエットコーラを抱える姿は誰しもが見たことがあると思います。更には、ベジタリアンが異常に多かったり、誰しもがジムに通ったり。

健康維持するためのサービスが盛んなのは、Fitbitを始めとするアクティビティトラッカーが流行ってIPOしたり、大豆などの野菜から肉を作るスタートアップがGoogleとBill Gatesの争奪戦にあったりということにもつながっている気がします。

でも日本人的には、車通勤がそっくりそのまま公共交通機関に代わるだけで、運動量が一気に増えて医療費も減り、設備投資なんて一気にペイ出来てしまう気がします。


何でもデカイ。

学生時代までを過ごした杉並区の実家には、最寄駅近辺を含む徒歩10分圏内にスーパーが3軒。地元の八百屋と魚屋に薬局を含めれば、日常の買い物ができる店舗が10軒ぐらいありました。静岡の地方都市に引っ越した後は、地方特有の車生活でしたが、徒歩10分圏内に2軒のスーパーがありました。

でも今は歩いては絶対に行けません。あ、うそ。一軒だけFairway(三浦屋的なスーパー)には歩いて行けます。Trader Joe'sも偶然近くにありますが、車で10分はかかります。

そして一番の問題は、商品が大きいことと、袋がボロイこと。

日本は手ごろな大きさの商品を、下手すると電車に乗って持ち帰ることを想定しているためか、ビニール袋が余程のことがない限り(or運が悪くない限り)破れないので八文目ぐらいまで詰めます。だいたい片手に一袋ずつって感じかな?こっちは牛乳に一袋(しかも二重)、肉類で一袋(これも二重)、野菜とフルーツでもう一袋、とどんどん増えていき、結局6袋ぐらいになります。

そう。商品がいわゆるアメリカンサイズ。一つ一つが重い。牛乳のスタンダードサイズがガロン(約4L)だし、シリアルもでかい。玉ねぎはデカイ上に6個ぐらい入っているし、肉も重い。さらにどうせ車まではカートに乗せて持って行くし、車で家に帰った後はトランク~玄関~キッチンまで持てば良いという発想なのか、袋が破れる破れる。

コストコ(ちなみにこっちではコスコと発音)に行けば、これが更にデカイ。鳥の丸焼きが売っているが、これが小さく見えるほど他のものが大きい。さらにこちらは売価削減のために袋がない。。。完全に車、しかもピックアップで来て、持って帰ること前提。

そりゃ、どこも寄ってたかって宅配サービスを始めるわ、と思いました。Instacart、AmazonGoogle、さらには大手スーパーチェーンまで。重い、持てない、遠い、ガソリン代かけたくない。そもそも若い人は車を持っていない人も多いから余計に流行るという側面があるのかも。


手持ちの現金は基本ない。

日本に最後に帰ったのが2014年の秋に一週間滞在しただけなので、今ひとつ感覚がつかめていませんが、恐らく今でもほとんどの人がSuicaPASMOは持っていても、現金は別に持っていますよね?それがアメリカでは基本的に現金は持ち歩かず、クレジットカードとデビットカードぐらい。それに免許があれば、それで僕の財布は完成。

たまにテイクアウトの中華料理屋だったり、現金のみのところもあるけれども、ほとんどどこでもクレジットカードが使えます。元々は防犯上の問題かと思いますが、本当に普段はチップで必要な1ドル札が数枚ある程度。そういう意味では、Squareのようなペイメントサービスや、Apple Payのようなサービスが普及するきっかけが大いにありえそうです。

そういえば、LINE Payってどうなってるんだろう。あれだけのユーザーベースがいながら聞かないなぁ。


セダンが多い。

本当に多い。どこかで「Americans love good old sedans (アメリカ人は昔ながらのセダンが好み)」と聞いたことがあるけれども、本当に街中を走っている車もセダンが多い。日本は逆に時代時代で流行りがあって、ステーションワゴンからミニバン、プリウスに今は何が流行ってるんだろう。

でもそんな中、アメリカはどのメーカーも一番ライナップが豊富なのはセダン。そうなると見かけ的にUberとか成り立ちやすい?なんて考えちゃう。タクシーといえばセダン。セダンを持っているからタクシーになる。Uberに参加しよう的な。そうでもないのかな。


なんでも大きい。中でも家が広い。

6年前にアメリカに引っ越してきて初めて借りたのが、屋内駐車場2台分・プール・ジム・コンシェルジュ付き120平米の2LDK+2バスルーム新築マンション。だいぶセレブな感じですが、家賃的にはこの地域の平均的な一軒家ぐらい。その次に住んでいる今の家は、地下1階・地上1階建ての計200平米の一軒家。正直裏庭に日本の狭小住宅が二棟、前の庭にも二棟は立つ。

1時間車を走らせてマンハッタンの家賃がお高い地域でも、ワンルームと言いながら日本のものより二回りぐらい大きいと思う。そして、それに合わせてこっちの家具ときたら、無駄に大きいこと、大きいこと。

デザインが昔ながらって感じで、ダサい。その上デカイ。これ家電でも同じ。うちの冷蔵庫なんて日本の何倍あるのってぐらい。しかも地下にもう一台予備があります。

IoTって騒がれていて、いくつかスマートホーム系のIoTを買いましたが、これ、日本に帰るときにどうしよう?もっと小さくないとそもそも置けない気が。これ、商品化するときもポイントで、日本展開を真剣に考えるならまず小さくしないと。

そういう意味でもソニーに影響されて、薄く小さくを目指したアップルは正解だったのかも知れません。


ボーナス商戦がない。

日本人は、半期ごとにTrendyとかに「今年のボーナスで欲しいものTop10」みたいなランキングが出ますが、それがこっちはない。その代わりに、一点勝負と言わんばかりに年末に大きく消費に走る。休日もそういえば、秋〜年末に偏っている気が。10月はコロンブスデー(コロンブス記念日)、11月にベテランズデー(退役軍人の日)とサンクスギビング(感謝祭)、12月にクリスマス。

購買行動は休日・祝日が与える影響が大きいと思いますが、ブラックフライデーやクリスマスなどの大型休暇が重なる第四四半期に勝負をかけている企業は多いのでは?



という具合に、かなり日米の思考回路にはここまで差があることに気づきました。
日本ローカライズ、アメリカローカライズ以前に、アメリカ市場を基準にするならこういった思考を一度経験しないと。本社ビルのデスクでアメリカ人はなんて考えている状況で、ユースケースやアプリケーションを考えていても難しいのでは?なんて思いました。

キラーアプリケーションなんて、そうそう市場と接していても見つかるものではないですし、そもそも見つかれば苦労しないですしね。そういう意味だと、まずは探しに来てみる、またはキラーアプリケーションなんてないという前提にたって考えてみる必要があるのかも知れません。


もうちょっとこれを日常の場面を一つ一つピックアップしてみると面白いかも。